物事を分割して整理する。エクスポージャー法・その２

エクスポージャー法が、あがり症克服のために効果的であることを述べました。このエクスポージャー法にとりかかる前に、ひとつの準備作業があります。

まず対象者の問題点をはっきりさせることが大切な前準備です。問題点をはっきりさせるためには、本人にとって複雑になっている事柄を整理することが必要になります。

たとえば、数年間放置してひどく荒れ果てた家屋があるとします。その家屋をきれいに整理して片付けなくてはならないとすれば、いったいどこから手をつければいいのか、どのように片付ければいいのか分からず途方にくれてしまいます。

しかし、いちどきに家屋の全てに着手するのではなく、部屋ごとに分割し、この部屋から片付けていこう、というように対象を絞りこんで手をつけていけば、少しずつ整理は進んでいきます。対象を絞り込む、すなわち問題点を分割してとらえることができれば、効率的に家を片付けることができるわけですね。

あがり症の克服についても同様のアプローチで臨みます。

あがり症の人が治療を受ける際には、問題点を挙げなさいと言われても、自分の問題を上手に説明できずに途方にくれてしまう人が多いようです。「私はとてもあがり症なのです」と現在の状態を言われても、治療者はどこから着手していいのか分かりません。

「私はあがり症なのです」という現在の状態の説明を少し細分化してみます。これまでの経験で「いつ、どこで、誰と、何をしている時に」あがるようなことがあったのか、問題点の整理をします。

自分がどのような状況に置かれるとあがりやすくなるのか書き出し、それらを感じる不安の強さの順にリストアップしていきます。いやいやながらでも何とか立ち向かえる状況はどれか、いつも必ず逃げたくなる不安の大きい状況はどれか、そのようなことを整理していきます。

これらの作業は、エクスポージャー法を進めていく上での前段階の重要な作業になります。